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中沢

中小企業のM&Aにおけるデューデリジェンス


 2020年5月に執筆した㈱経営承継支援様のサイト内のコラム「M&Aの流儀」は、売却する会社のオーナーを読者対象としたコラムになっています。実は当初勘違いして、買い手側の会社の人を対象にした話も作っていました。

 お蔵入りさせるのもなんですので、少しずつこのサイト内でも紹介していきます。


 事業会社で買収をする場合、投資会社と違って会社を売り買いするわけでもないのですが、やはりいかに安く買い受けるかというのが成否の大きなポイントになります。買収する際に割高で買ったところで、何も良いことは起こりません。

 ここで、買い叩きましょうと言っているわけではありません。買収金額の他に見逃せないのが、デューデリジェンス(DD)と仲介手数料です。今回は、デューデリジェンスについての私なりの考えをご紹介します。


 私の古くからの仕事仲間でもあり友人が以前雇われ経営者をしていた会社は、ある投資ファンドが買収していました。

 聞くところによると、その投資ファンドは売上30億円のその会社を買収するに当たって、DDに一流法律事務所と外資系コンサルティング会社を使って2億円以上かけていたようです。1.2億円ほど払った法律事務所の出したレポートには「未払い残業代が800万円近くのぼっているリスクがあるので、早急な治癒が必要」「メインサプライヤーとの契約書がない、口頭の約束が多いので危険」といったことが書かれていました。


 そんなレベルであればファンドの担当者でも誰かちょっと気の利いた人間がヒアリングして電卓はじけばわかることですし、「危険だからなんだ?」と思って話を聞いたら全然予想と異なるビジネス上の実態が出てきたり、法律事務所への支払いの消費税にも満たない金額の指摘にどれだけ意味があるのかと、その友人と酒の肴にしていました。


 7000万円も払った外資系コンサルティング会社の出したビジネスDDのレポートには夢のようなシナリオが書いてありました。

 が、友人が着任したその日に聞かされた、メイン卸への押し込み・不稼働在庫の存在や、自社倉庫が全く正確に把握されていないことやシステムに不備がありまくる(正常化するには投資がかかる)ことなどは1文字も触れられてなく、夢への追及どころか他にもあった諸々の瑕疵のリセットに1年近くを要していたそうです。挙句の果てにはファンドに「早く結果を出してくれませんか?」と言われたそうで…。

 中小企業におけるデューデリジェンスは、売り手がちゃんとした会社であったり支払い余力がある個人であったりしたら、表明保証(売却する時に申告していた内容にモレがあって、そのモレから起こった損害は後から払ってもらうという契約。よくあるのが未払いの残業代など)で縛れば、B/Sの実態だけ会計士に50-150万円ほどで確認してもらい、法務的な点は主要な点を質問と書面による証明、辞めたら事業価値が変わるレベルのキーマンへの面談くらいでいいのかと捉えています。

 実際に私が顧問をしているクライアントが小さな会社を2000万円で買い受けた際には、たまたま直近の決算が出てくるタイミングだったので、「この決算は正しいです」という表明保証を売主(個人・創業者の子供)にしてもらって、私が一通り主要な点は質問して言質を取り、一応念のため譲渡代金は3回に分けて支払わせてもらう(その間に瑕疵が見つかったら相殺する)ようにしてもらうだけの対応にしました。

 そうして、DD予算を300万円取っていたのをゼロで済ませてしまいました。私の追加報酬には回ってきませんでしたが……。

 たまに「DDって何をしなければいけないのでしょうか?」と聞かれることがあります。

それは、買い手が自分の資金の出し手への説明責任がつけばなんでもいい(オーナー企業であった場合にはイコールなので、なんでもいい)というのが私の回答になっています。

 買う瞬間も大事ですが、買った後の成長に集中してお金をかけるほうが活きたお金の使い方だと捉えています。



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